炭の魔法

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世界で注目の白炭、その特徴とは?

黒炭と違ってあまり聞きなれない炭、白炭。世界で焼かれている炭の大半は黒炭です。製炭に高度な技術を必要とする白炭は、とてもユニークな存在。白炭とは、どのような炭でしょう?

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白色の正体

最もよく知られている白炭は、鰻、日本料理の炭場などでおなじみの備長炭です。白炭は、1000度以上の高温で焼いた硬質の炭。真っ赤に燃える炭を窯から出したときに、火を消すためにかける灰で白くみえることから白炭とよばれます。一方の黒炭は400~700度で炭化し、炭化が終わると窯をふさぎ消火するので黒一色です。白炭、黒炭といった消火法による分類は明治時代に始まりましたが、炭の特徴を良く表す合理的なカテゴリーです。

使われている木は?

白炭の原木は、ち密な木質のカシ、ナラ、クリなどブナ科の木。なかでも、ウバメガシとカシを原木とした白炭のみが備長炭とよばれます。生産量トップの土佐備長炭(詳しくはこちら)、老舗の紀州備長炭、アラカシの日向備長炭、秋田白炭、利島の椿白炭が良く知られています。輸入白炭には、マングローブユーカリ、マイテューなどの木材が使われています。

安定の燃焼力と持続性

白炭の持ち味はその燃え方。プロの料理人に好まれるように、燃焼が安定しているうえに、火持ちが良いのが特徴です。白炭と黒炭の燃え方の比較実験をみると、黒炭は着火後急速に温度があがり40分後には800度でピークを迎えます。そのあと降下し、3時間後には250度になっていました。一方、白炭は徐々に上がって着火1時間後に500度に到達、安定して500度を保ち続け3時間後も少し下がった程度でした(三浦, 1923)。うちわ一つで500度の火を1000度まで温度を上げることができるなど、火の調整が容易なのも白炭の美点です。

着火と爆跳には要注意

とても魅力的な燃焼パターンの白炭ですが、残念なのは、火の着きにくいことと、爆跳が起こりやすいこと。木炭内の水分や揮発成分が爆発、バーンと大きな音とともに飛び散りるのが爆跳です。木炭の破片により怪我をすることもあるので、十分注意する必要があります。

鋼級の硬さ

もうひとつ重要な白炭の特徴は硬さです。鉛を1、鋼を20とした三浦式硬度で、ウバメガシは19と鉄より強度の強い鋼なみ、カシは15、ナラは12と白炭は高い硬度を示します(岸本, 1953)。実際、白炭と白炭を打ち合わせると、木とは思えない澄んだ音が響きます。白炭のきれいな音色を楽しむために、ウィンドチャイムに利用したり、音板に白炭を使った炭琴もあります。

断面には貝殻の内側の真珠層と同じような光沢があり、黒曜石のように輝くのも白炭ならでは。水道水の浄水や炊飯などの食用、お風呂に入れる炭には硬い白炭がむきます。

まとめ

黒炭とは、燃え方、硬さ、外観が違う白炭。白炭でも輸入のものは廉価ではあるものの、火力が劣り、爆挑がおこりやすいといった側面も。賢く使いたい、ハイエンドブランドの国産白炭です。

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<参考資料>一般社団法人全国燃料協会;岸本定吉, 1953.「製炭試験(第3報) : わが国木炭の精煉に関する研究 : 特に木炭の電氣抵抗と精煉について」林業試驗場研究報告. 65;岸本定吉, 1984.「木炭の博物誌」 総合科学出版炭文化研究所(編), 2019. 「エコロジー炭暮らし術」創森社;社団法人全国燃料協会;途上国森林ビジネスデータベース;三浦伊八郎, 1923.「木炭の燃焼温度と燃焼時間」大日本山林会報484, 20. as cited in森林総合研究所(監修), 2004.「木材工業ハンドブック改訂4版」丸善