炭の魔法

時計のない時間、心躍るおいしさ、自然の癒しをまねく炭。

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食材の美味しさ引き出す炭火炊き

炭火を使った料理といえば、炭火焼き。

焼鳥に鰻。炭火焼きせんべい。

ガスで焼くより炭火で焼いたほうが、食材の持ち味を活かせて美味しくなることは良く知られていますが、炭火での煮炊きは?

直火調理でない煮炊きだと、ガスでも、炭でも、影響なさそうに思えます。

ところが、吉祥寺の行列が絶えない和菓子店「小ざさ」では、今でも高価な炭を使って羊羹や最中をつくっているそうです。

炭火で煮炊きをするメリットとは?

微妙な温度調整が得意

「羊羹作りは最終仕上げの一かけ、二かけの仕上げ温度が問題で、この時に温度で羊羹の味が違う。このようなデリケートの温度調節は、木炭に限る。

ガス火ではとても調節が厄介で、一人つきっきりで調節しなければならないが、木炭だと火は適当におこり、微妙な温度調節が自然にできて、羊羹作りは木炭に限る。」

「小ざさ」店主の話として、炭博士岸本定吉さんの本に紹介されていました。

本の発行は1985年ですが、小ざさのホームページをみると、現在も炭が使われているそうです。

梅肉エキスづくりにも重宝する炭火。

青梅のしぼり汁を煮詰めて作る梅肉エキス。うぐいす色のさらさらな汁が黒色になるまで数時間かかりますが、炭火なら側についていなくても、ときどき混ぜれば大丈夫。最後の仕上げの調整もしやすく、簡単に作れます。ガスで大変だったという話しを聞くと、炭火をおすすめしたくなります。

母の味をうみ出す炭火

懐石料理の名門「辻留」の二代目主人だった辻嘉一さん。

著書「味覚三昧」のなかで、料理の火には文火と武火があると解説しています。強火で短時間に煮る武火に対して、コトコト煮るのが文火。文火で上手に煮ると、しみじみとした旨味が生れ、「真の日本料理なりとうなずける美味となる」と述べています。日本の母の味は「文火によって生まれる不思議な美味」。

この文火をうまく作り出してくれる熱源が炭火。岸本さんのいう炭火の「まる味を帯びたやわらかい火」は、コトコトと気長に調理する文火での煮炊きに最適です。

小豆を煮るには炭が一番

前から気になっていた、炭がよいといわれる理由(関連記事はこちら)。

店じまいをして20年経った今も、その美味しさが語り継がれるあんづくりの名人にたずねてみました。この名人は炭を使っていませんでしたが、弱火で静かに煮ることの大切さを教えてくれ、文火と炭火につながりました。

おわりに

焼くによし、煮炊きもよし。

しかも、食材の美味しさを引き出してくれる炭火。

料理の熱源として文句のつけようがありません!    

 

sumimagic.hatenablog.com

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<参考資料>岸本定吉, 1984.「木炭の博物誌」 総合科学出版;辻嘉一, 1976「味覚三昧」中央公論社