コンビニやスーパーに必ずある炭といえば、活性炭。
脱臭剤、除湿剤として棚に並び、使い捨てカイロにも身を潜めています。
活性炭は、21世紀前半の私たちの暮らしのなかで一番身近な「炭」です。あらためて、活性炭ってどんな炭?新たな分野にも活躍の場を広げている活性炭とは?
活性炭とは?
活性炭の「活性」とは「吸着性が高い」こと。
普通の木炭にも無数の小さい孔があります。活性炭はより多くの深いを、より深いところまで開けて、吸着能力アップを図るのが特徴。ナノオーダーの微細孔をつくることで内部の表面積を大きくし吸着能力を高めています。
吸着能力を高める賦活には、次の2つの方法があります。
活性炭の原料は、木材チップやおがくずなどの木質系、ココヤシやパームヤシなどの果実殻。他にも、石炭、石油コークスなどの鉱物、合成樹脂、化学繊維が使われます。
活性炭利用の進化
20世紀の始めに工業生産されるようになった活性炭。
そもそもは砂糖の脱色、精製用に開発されたのが始まり。日本酒の脱色、香味の調整にも使われています。環境浄化、電子デバイス、医療・薬用(くわしくはこちら)など、時代のニーズに応え新しい使い方が次々に誕生、高機能化が進んでいます。
高機能活性炭で浄水
水汚染の問題に対し、活性炭はその優れた吸着機能で汚染物質の除去に活躍。家庭の浄水器に、上水・下水・工場排水の処理に使われてきました。
さらに効果を高めるため、微細なメソ孔やマクロ孔に物質を吸着させて新たな機能をプラス。家庭用の浄水器の活性炭には、抗菌性を高めるため銀が添着されているものもあり、雑菌の繁殖を防いでいます。
浄水場では、生物活性炭が微生物による分解作用を発揮。オゾン酸化と組み合わせて、高度上水処理システムで使われています。
エネルギー貯蔵デバイス
情報化社会(Society 4.0)のニーズを受けて、活性炭のもつ導電性と吸着機能を活かし、電気を蓄える電気二重層キャパシタ(EDLC)が開発されました。EDLCは、活性炭電極と電解液によって形成されるエネルギー貯蔵デバイス。
リチウムイオン二次電池などと比べると、
- 急速充放電が可能
- 広い温度範囲に対応
- 長寿命
といったメリットがあります。
はじめは小型のメモリーバックアップ電源としての利用でしたが、活性炭の改良が進みEDLC のエネルギー密度が向上。大型EDLC がEV車のパワーアシストとして搭載されており、ウルトラキャパシタ、スーパーキャパシタとしても知られています。
Society 5.0のエネルギー利用にも役立つ活性炭。
このさき、一体どのような活用の方法がでてくるか楽しみです。
<参考資料>阿部郁夫, 1993. 活性炭の基礎知識, 生活衛生, 37: 163-170;阿部郁夫, 1997. 木炭と活性炭, 炭素;阿部郁夫, 1999, 多機能材料:活性炭 木炭, 色材, 72:388-396;近藤精一ら, 2020. 吸着の科学 第3版, 丸善出版.