炭の魔法

時計のない時間、心躍るおいしさ、自然の癒しをまねく炭。

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お腹のなかでも力を発揮!炭の薬

真っ黒なパンにお蕎麦。炭の粉を練り込んだ食品をときどき見かけます。ハロウィーンのお菓子作りにも、天然の着色剤として人気の炭の粉。食用炭はよく知られていますが、炭は薬にもなります。炭にはどのような効き目があるのでしょうか。

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フランスでは炭が錠剤に

はじめて炭の薬と出会ったのは、フランス語圏のアフリカの国でした。お腹を下して弱っていた時に、友だちが持ってきてくれたのが炭の錠剤。1錠が直径約2㎝、厚みもあるフランスで製造された炭の薬。友だちのかかりつけのお医者さんは、下痢の症状で受診すると、この薬を必ず処方するといって持ってきてくれました。薬局で買える市販薬です。

この炭のお薬は、活性炭で作られていました。活性炭は、炭にもう一工程加えて、よりたくさんの孔を、より深く開けた炭。通常の炭に比べて高い吸着力を持ち、胃腸炎の原因となる細菌が分泌する腸内ガスと毒素を吸着します。フランスでは下痢のほか、腹部の膨満感を和らげるために医師によって一般的に処方されています。

急性中毒の標準治療に薬用炭

日本のドラッグストアに行くと、活性炭や竹炭の粉末を使ったサプリは目立ちますが、お薬は見当たりません。しかし、日本でも、炭は、医薬品の規格基準書である日本薬局方に記載される医薬品。カタカナ表記の薬品名がならぶ「化学薬品等」のなかに、「薬用炭」として名をつらね、重金属類、吸着性能などの規定が細かく定められています。

薬用炭も活性炭。主に救急医療の現場で、多くの物質と結合する吸着性を活かし、急性中毒の標準治療として使われています。活性炭は、それ自体は体内に吸収されず、中毒物質が体内に吸収されるのを抑えます。日本中毒学会によると、すでに血液のなかに吸収されてしまった薬毒物さえ、活性炭は排泄を促す効果をもつそうです。

風邪にも効くかも?

紀州備長炭のレジェンド、玉井又次さん。卓越した製炭技術、後進の育成などから多くの賞を受賞した名匠です。

玉井さんは、著書「紀州備長炭の技と心」で、終戦後に潜んでいたフィリピンのジャングルで、炭でアリや筍などを焼き、炭も一緒に食べることで健康を保っていたと語っています。炭を食べると、黒い便がでて身体の調子が良かったそうです。炭が胃腸に良いことは、体験するまで知らなかったけれど、炭が風邪の薬になるとは聞いていたとのこと。

おわりに

「炭は人を元気で長命にする力をもつ」、炭焼きさんたちの実感だそうです。整腸や解毒以外にも、明かされていないパワーを秘めていそうな炭です。

なお、市販されているBBQ用の炭や活性炭は食用ではありません。胃や腸を傷つける危険性もあるので、口に入れる炭は身元の確かな食用炭やサプリにしましょう。

<参考資料>」医薬品医療機器総合機構第十七改正日本薬局方」;池嶋 庸元 (著), 岸本 定吉 (監修), 2001「炭人たちへ―炭博士にきく木炭小史」DHC刊;炭活用研究会(編著), 杉浦銀治(監修), 2014「図解よくわかる炭の力」日刊工業新聞社;玉井又次、広若剛, 2007「紀州備長炭の技と心」創森社一般社団法人日本中毒学会:Vidal ”Le charbon végétal active