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気候変動対策の秘策!バイオ炭

国立環境研究所によると、2019年度の日本の温室効果ガス総排出量は二酸化炭素換算で12億1,200万t。一方の吸収量は4,590万tと、排出量の4%に過ぎません。

2050年のカーボンニュートラル達成は遠い道のりのよう。。。

排出量削減の方法は、エネルギー関連を中心によく耳にします。吸収量を増やす方法は主に、森林の適切な整備による吸収量の向上。そこに、炭素を土壌に閉じ込めることで固定する方法が登場しました。バイオ炭です。

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バイオ炭とは?

バイオ炭とは、生物資源(バイオ)を材料とした炭化物のこと。

木炭、竹炭はもちろん、もみ殻・稲わら、草木、家畜糞尿、製紙・下水汚泥といった廃棄物を炭化したものも含みます。

気候変動対策としてのバイオ炭

バイオ炭の原料の生物資源に含まれる炭素。そのままだと、微生物に分解され二酸化炭素として大気中に放出されます。そこで、炭化によって分解されにくい形にし、土壌に施用することで炭素を土壌に封じ込め。炭素貯留によって大気中への放出を減らすことが、バイオ炭のねらいです。

2019年、「バイオ炭の農地施用」は温室効果ガスを吸収する取組みとして、IPCCで国際的に認められました。翌年、国内の温室効果ガス排出・吸収量を取引する仕組み、J-クレジット制度の適用をうけています。

J-クレジットの対象は、炭化温度が350度以上の木炭、竹炭、廃棄物由来の炭化物など11種類。炭素含有率、炭素残存率(炭素が 100 年後に残っている割合)の値が決められています。

江戸時代からの微生物活性剤

バイオ炭は英語のバイオチャー(biochar)をもとにした新しい呼び名。

けれど、炭化した生物資源、国内では長い農業利用の歴史があります。出版された農書の中で最も古いといわれる「農業全書」(元禄時代)のなかで焼肥、焼糞がおすすめされています。焼肥とは「万の物をつみ重ねて蒸し焼きにし、その灰を濃き肥に合わせる」、バイオ炭に下肥を混ぜたもの。やせた土地でのダイズ、エンドウ、ササゲの栽培に良いとされていました。炭の施用で共生微生物が増える、焼肥の効果が1980年代の実証試験で確認されています。

ポテンシャルを秘めたバイオ炭の炭素固定

2018 年度のバイオ炭の施用量は 約 2,500t。20,000tを超える投入量があった1990年代中頃と比べてかなり減っています。バイオ炭の使用量を10t /haとすると、2018年度のバイオ炭を施用した農地の面積は 250ha、日本の農地面積 437 万 ha(2020年)に占める割合は 0.006%とごくわずか。大きなポテンシャルを秘めています。

従来はバイオ炭といっても、ほとんどが粉炭。荒れた竹林の整備と竹の炭化や、山梨県の果樹剪定枝の炭化など、新しいバイオ炭の施用が少しずつ進んでいます。

おわりに

1950年代ごろまでは、大切な肥料だった焼肥や灰。

バイオ炭の農地施用復活で土壌環境は整い、バイオ炭を作るために里山林や人工林は若返って炭素吸収率アップ。化石燃料に頼った肥料の利用も減って、ゼロエミッション化が進む。これこそ、スマート農業では!

 

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<参考資料>小川眞, 1984. 炭を使った土壌微生物相の調節, 農林水産技術研究ジャーナル. 7:41-46;環境省, 温室効果ガス排出・吸収量等の算定と報告経済産業省中部経済産業局, 2021. バイオ炭とは ~農業分野での脱炭素~;国立環境研究所, 2021. 2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について農林水産省, 2021. 令和3年耕地面積山梨県, 4パーミル・イニシアチブについて.