蔵の敷地に埋炭、麹室は四方に炭を埋め込み、
蔵付き微生物だけで日本酒を醸す寺田本家。
原料のお米を無農薬で栽培するべく、田んぼにも炭を埋めました。
生命力の強いイネが育ち、天候不順や台風にも負けず良質なお米を収穫。
他にも、りんご、ゆず、野菜など実践例が各地にみられます。北海道開発局は埋炭の実証試験を数年間行い、収量増加などの効果を報告しています。
植物が育つ基礎となる土。この土に働きかけて植物の生育を高める炭の役割とは?
炭の土壌改良効果
地力増進法の土壌改良資材として指定を受けている木炭。
多孔質の特性を活かして、透水性・通気性を良くします。炭自体が吸水するため、保水効果もアップ。養分の流亡を防ぐ、アレロパシー物質など生育阻害物質も吸着します。
炭の小さな孔は微生物の棲みかとなるため、土の微生物環境の改善にも。そして、炭は炭化温度によってpHが異なるので、土壌のpH値の調節も可。
これらは炭を土に混ぜ込んだときに見られる効果で、よく知られている炭の土壌への働きです。
ですが、たくさんの炭を埋め込む埋炭は、また違った効果を発揮するようです。
炭で大地の磁気や電位を調整
磁気
地球は大きな大きな磁性体。
目に見えないエネルギーなので自覚しにくいですが、生きものは磁場の影響を受けています。
磁気強度を高めた培地で細胞を培養すると、生育スピードがあがり増殖が促進されることが研究から明らかに。細胞の増殖速度を最も高めたのは、地面の磁気の約千倍の強さでした。ちなみに、血行を良くして肩こりにきくといわれる磁気健康器は、地磁気の2~3千倍の強さです。
磁気が細胞増殖をどのように高めているか、そのメカニズムは未だ解明されていませんが、DNAの複製や細胞分裂に作用すると推察されています。
埋炭は反磁性の炭を埋めることで、植物の生育に好ましい磁場をつくり出している可能性が考えられます。
電位
地中に常に流れている微弱な自然電流、地電流。
物理学者の楢崎皐月さんは、全国12,000ヶ所以上の箇所で地電流を計測しました。
電位が高く安定している場所と、電位が不安定もしくは低い場所があることを確認。前者の土地では草木の生育が良く人や動物が元気、一方、後者では病害虫や不作で健康不良が起こりやすいことをつきとめました。
埋炭は、電気伝導性の高い炭を電位の低い場所に埋めることで電気の流れを改善。これが、植物の生育が良好になる理由の一つと考えられています。
おわりに
マサチューセッツ工科大学のルーウィン物理学教授は、
「電気についての知識がこれだけあっても、一日に4500回起っている雷雨をはじめとして謎はたくさん残されているのだ」と語っています。
先の時代を生きる人類からみると、私たちが知っていることはほんの少しかもしれません。
今回、昆虫分子生体電子工学の祖、フロリダ大学のキャラハン教授の名言、
「物理学は、化学を生物学につなぐ科学だ」を知りました。
低周波の微弱な電気や磁気が生きものに好影響を与える。そのメカニズムが明らかになると、炭に活躍してもらう場が広がりそうです。
<参考資料> 炭文化研究所(編), 2019. 「エコロジー炭暮らし術」創森社;ウォルター・ルーウィン, 2012, これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義, 文藝春秋;正田誠, 1994, 生物に及ぼす磁気の影響, 醸協, 89:710-715;寺田啓佐, 2007, 発酵道, 河出書房新社;西原英治・元木悟, 2009, 活性炭の農業利用:土壌浄化の新技術, 農文協;農業農村工学会, 科学/技術の総合化, http://www.jsidre.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/02/useful_info1.pdf;宮嶋望, 2017, 共鳴力:ダイバーシティが生み出す新得共働学舎の奇跡, 地沸社;Callahan, P.S., 1994, Paramagnetism: Rediscovering Nature's Secret Force of Growth, Acres.