竹あかり。とても幻想的で、引き込まれる美しさがあります。
竹ならではの輝きで、みている人たちをやさしい笑顔にしてしまいます。ほかの素材だったら、灯りもまったく違ったものになるでしょう。
竹あかりが教えてくれた、竹の美しさ。なじみの深い竹ですが、あらためて見直すと、成長の速さに、バイオマス利用の6つのFを難なく制覇と圧倒的な素材力です。そして竹を炭化した竹炭にも、木炭にはない個性が。
飛びぬけて速い成長スピード
里山の広葉樹は伐採できるまで約20年かかりますが、竹は3~5年の周期で伐採可能。4年生、5年生ではすでに老齢竹とよばれてしまう竹の世界です。1日の成長スピードが、マダケで121cm、モウソウチクで119cmという記録もあるほど。
日本最古のSFといわれる「かぐや姫」は、手のひらにのるぐらいの大きさでした。小さい赤ちゃんだったかぐや姫、わずか3ヶ月で大人の女性に成長します。タケノコが成竹になるまでの期間も3ヶ月。竹の成長の速さを物語っています。
バイオマス利用6つのF
かぐや姫を見つけたおじいさんは竹職人でした。
笠、竿、笊(ざる)、籠、筆、箱、筒、箸。あらためてみると、ふだんお世話になっている身の回りの道具は、竹冠の名前がとても多いことに驚きます。竹のつく常用漢字は140もあるそうで、生活への密着ぶりがうかがえます。
バイオマス利用として一般的に知られる5つのF。Food(食用)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)がありますが、竹はすべてのFに対応可能です。
そして、6つ目のFのFacilities(快適な環境、設備)は、写真の竹あかりように美しい光で世界を照らす芸術品としての竹。この竹あかりは、徳島の「たけの花」さんの作品です。写真でも十分魅力的ですが、目の当たりにすると別次元の美しさです。
ニューフェース:竹炭
縄文時代の遺跡から、竹でつくられた笊、籠、魚をとる筌(うけ)が出土しており、日本人とのつき合いがとても長い竹。
長い竹の利用の歴史のなかで、竹炭は20世紀後半になって脚光をあびたニューフェース。竹炭がなかったわけではありませんが、火は着きやすいものの立ち消えしやすいため燃料としては重宝されませんでした。
それが、高い吸着性や、豊富に含まれるミネラルなど、燃料以外の特性から、調湿・除湿、鮮度保持、水質浄化、飲料・炊飯、風呂、空気清浄、家畜の飼料などに竹炭が使われるように。(竹炭の空気清浄効果についてはこちら)
そして、現在。竹炭の機能をパワーアップした竹活性炭や、食品添加やサプリとして細かく粉砕した竹炭、調湿の利用が特に人気。環境を保全しながら炭素を固定する策としての竹炭も注目されています。
竹活性炭:ヤシ殻活性炭と互角の高性能
活性炭は、ふつうの炭より吸着性が高いのが特徴。活性炭の性能は、製造方法だけでなく原料の種類の影響を大きく受けます。
よく聞くのはヤシ殻を原料とした活性炭、高い吸着性は微細な孔によるものです。モウソウチクを活性炭にすると、木や石炭の活性炭に比べて孔は小さく、ヤシ殻活性炭と同じ大きさの微細な孔が形成されます。活性化処理の効率は、ヤシ殻活性炭よりも高くなりました。
炭素固定に貢献
光合成で二酸化炭素を取り込む竹。その竹を炭化し土に還せば、大気中の二酸化炭素の固定につながります。
千葉県のNPO法人いずみ竹炭研究会は、この取り組みのパイオニア。里山で異常繁殖している竹を整備し、整備現場で開放式の炉を使って約3時間で1トンの竹炭を製炭します。林野庁の調査によると、研究会の竹炭の炭素含有率は8割を超えていました。4年間で焼いた300tの竹炭は240tの炭素、二酸化炭素換算で880tを固定したことになります。
おわりに
国産竹炭、実はとても希少です。
竹炭の95%は輸入品、国産の供給は5%。竹炭の炭焼きさんの数も、2019年現在約450人です。昨年(2021年)の国連世界幸福度ランキングで56位だった日本(Helliwell et al., 2021)。炭を扱う人は「人生が豊かで幸せになる」「健やかな人生がおくれる」という言葉を聞くと、炭を外注する日本はもったいないことをしてるのかもと思います。
<参考資料>阿部ら, 2003. モウソウチク(Phyllostachys pubesoens Mazel ex Houzeau de Lehaie)の炭素化および水蒸気,二酸化炭素,空気を用いた賦活による活性炭の製造, 炭素. 208:114-119;内村悦三, 2008. タケ・ササ手入れのコツ, 創森社; 内村悦三(監修), 2009. 現代に生かす竹資源, 創森社;中根周歩, 2008, 竹炭のふしぎな力. 小峰書店;特用林産振興会;西沢真美, 2021. 生長が早い竹を炭に4年間でCO2 880tを回収. 季刊地域 45;星新一(著, 翻訳), 2002. 竹取物語, KADOKAWA;山岸義浩, 2014, 竹虎四代目への道. 幻冬舎;Helliwell et al., 2021. World Happiness Report.