炭の魔法

時計のない時間、心躍るおいしさ、自然の癒しをまねく炭。

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ヒトだけではなかった!野生の健康に炭

炭を薬としているのは、現生人類だけではありませんでした。

旧人類のネアンデルタール人。石器技術、焚き火の調理、薬草の利用など洗練された文化で知られていますが、糞の化石から炭を食べていたことが明らかに。

動物たちも炭を利用、生存戦略に炭を取り入れているサルもいます。

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Photo credit: Erasmus Kamugisha

さまざまな動物が食べる炭

自然環境のなかでは、あまり目にすることのない炭。

野生動物にとっては、山火事や落雷のあとに木が焼け、炭が残ったときがチャンス。イギリスでは、山火事のあとに炭を食べにウマやシカなどの野生動物たちが集まってくることが。サル、ラクダ、オカピも炭を食べます。

イヌ、ネコ、ニワトリなどのペットや家畜も、焚き火のあとの消し炭を見つけて食べることがあります。栄養もなく、食べてもジャリジャリで、美味しいわけでもない炭。そんな炭を、動物たちが食べるのは毒素を吸着する炭の薬理作用のためと、研究結果から明らかになっています。

食の変化に炭で対応して繁栄

炭をいつも食べることで有名な動物といえば、ザンジバルアカコロブス。

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Photo credit: Olivier Lejade

東アフリカ、タンザニアザンジバル諸島のサルです。

けれど、すべてのサンジバルアカコロブスが炭を常食するわけではありません。昔ながらの生息地、森林に住むコロブスの多くは炭を食べず、草地やヒトの家の近くに生きるコロブスが炭を食べます。

炭を食べるコロブスは、インディアンアーモンド、マンゴなど、ザンジバルにはもともとなかった外来種の木の若い葉を多く食べます。これらの葉には、フェノール類など消化の妨げとなる成分や、有毒な二次化合が多量に含まれます。炭を食べないコロブスに比べて、炭を食べるコロブスは3倍ものフェノール類を摂取してしまうことに。

これを解毒してくれるのが炭です。平均体重が6kg弱のコロブスが、一日に食べる炭の量は平均約12g。獣医学で推奨している炭の効果的な投与量2g/体重kgと合っているのが面白いです。

毒ばかりでなく、タンパク質も多く含むというメリットもあるインディアンアーモンドとマンゴ。炭を食べるコロブスは高い繁殖率を記録しており、炭で解毒しながら、高い栄養を得ていることがその理由と考えられています。

おわりに

炭を食べるコロブス。

炭の食習慣は、母ザルから子ザルに伝えらていますが、どうやって始まったかは謎です。食べ物の変化にあわせて、健康のためには何を追加してとるべきかが本能でわかるのはすごい。と感心する一方、「ヒトも持っている本能ですよ」とコロブスに言われそうな気がします。

 

 

<参考資料>シンディ エンジェル, 2013. 「動物たちの自然健康法-野生の知恵に学ぶ」紀伊国屋書店; Britanica, Neanderthal; Struhsaker, T. et al. 1997. Charcoal consumption by Zanzibar red colobus monkeys: Its function and its ecological and demographic consequences. International Journal of Primatology, 18: 61-72. University of Michigan, Animal Diversity Web, Piliocolobus kirkii Zanzibar red colobus.