炭の魔法

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草木の精、お誕生日おめでとう!

備長炭三大産地のひとつ高知県

4月24日は高知県出身の植物学者、牧野富太郎さんのお誕生日でした。

日本植物分類学の父、牧野さんの功績を讃え、4月24日は植物学の日に制定されています。

あまりに植物に夢中になるので「自分はあるいは草木の精じゃないかと疑うほど」といい、こよなく植物を愛しました。

生誕160年の今年、お誕生日を祝して地元の高知新聞が贈ってくれた粋なサプライズとは?

桜色の新聞

40万点以上もの植物標本を残した牧野さん。

4月24日の新聞は、そのうちの一つ、桜の標本に包まれていました。

新聞の見開きに、1939年に採取したセンダイヨシノの標本が大きくプリントされ、背景はうっすら桜色。とても素敵な新聞です。

標本の裏面には

「植物に感謝しなさい。

 植物がなければ人間は生きられません。                                                                          

 植物を愛すれば、

 世界中から争いがなくなるでしょう。」

と、牧野さんの言葉が英訳付きで記されていました。

草木の精の棲むところ

95年の生涯で1500種類以上の新種・新品種を見つけ命名

たとえば、今が花盛りのジュウニヒトエ。1909年に牧野さんが「植物学雑誌」で学名Ajuga nipponensis Makinoを発表しています。

Ajuga nipponensis Makino

そして、牧野さんといえば、精妙な植物画で知られる牧野植物図鑑。

美しさもさることながら、いくつもの個体を良く観察し、典型的・標準的な個体を描いた点に特徴があるといいます。全体像だけでなく、花弁、おしべ、めしべなど植物の器官の拡大図や解剖図なども描写。10年前の生誕のお祝いで作成された牧野日本植物図鑑インターネット版で見ることができます。

素晴らしい仕事を成し遂げた牧野さんですが、大変なこともたくさんありました。小学校を中退し、ほぼ独学で植物学を習得。やっかみによる大学内での圧迫や生活苦はつきものでした。

けれど、天性の植物好き、「それは疑いもなく私一生涯の幸福であると会心の笑みを漏しています。従って敢て世を呪わず、敢て人をば怨まず、何時も心の清々しい極楽天地に棲んでいるのです。」と、自叙伝で語っています。

上記の本の解説は荒俣宏さん。牧野さんの笑顔をどんな人よりもナチュラルで明るい太陽みたいな笑顔と書いていますが、その通りだなと思います。

おわりに

今年1月に、牧野さんの生涯を描いた「ボタニカ」が刊行。直木賞作家朝井まかてさんによる、この長編小説は版を重ねています。来年4月には、牧野さんがモデルのNHK朝ドラ放映と、牧野さんにスポットライトがあたっています。

混沌とした今の世の中。草木の精の純粋な生き方や価値観に、突破口を見出しているのかもしれません。

sumimagic.hatenablog.com

<参考資料>オーテピア, 植物分類学の父:牧野富太郎https://otepia.kochi.jp/science/zone/84.html, 渋谷章, 2001, 牧野富太郎, 平凡社牧野富太郎, 2004, 牧野富太郎自叙伝, 講談社学術文庫牧野富太郎, 2010, 花物語, ちくま学芸文庫.