炭の魔法

時計のない時間、心躍るおいしさ、自然の癒しをまねく炭。

MENU

【七輪グルメ】江戸の食通が絶賛!さつまいもの塩がま蒸

2月は、さつまいもが美味しい季節。

貯蔵中に糖が増えるさつまいもは、秋に収穫されてから時間のたった今が食べごろ。

さつまいもの糖度は収穫されてからゆるいカーブを描いてあがり、2月下旬にピークに達する品種が多いです。

美味しくなったさつまいも、どうやっていただきますか?

スィートポテト、おいもの天ぷら、大学芋、おいもご飯に、お味噌汁の具。そして、じっくりと焼き上げた石焼きいも。石焼きいもを超える食べ方はないだろうと思っていましたが、新たに気になる料理が表れました。塩がま蒸です。

塩がま蒸は、江戸時代のさつまいもの料理本で最も美味と賞された一品。江戸の食通が絶賛するそのお味とは?

f:id:hanadiop:20220219164636j:plain

甘藷百珍物

江戸時代に珍古桜主人によって記された「甘藷百珍物」。

簡単なレシピも載っています。

さつまいも料理123品を奇品、尋常品、妙品、絶品にカテゴリー分け。絶品に格付けされた11品には、田楽いも、ハンペンいも、いもごま豆腐などがありますが、「風味至てよし」第一品と評されたのが塩がま蒸。

ちなみに、焼きいもはふつうランクの尋常品に分類されていました。焼きいもは、わらの熱灰に埋めて焼くとありました。

塩がま蒸の作り方

塩がま蒸の説明には、塩がまからかき出した熱い塩に、さつまいもを埋めて蒸焼きにするとあります。けれど、さつまいもに火が通るまで熱を保てるほど、大量の塩を用意することはむずかしい。

そこで、塩がま蒸に近い方法として、鯛の塩がま焼きを代用。塩につなぎとなる卵白を入れて衣をつくります。

  • 卵白            1個分
  • あら塩         200g

f:id:hanadiop:20220219164715j:plain

【七輪で焼く】さつまいもを塩の衣でくるむようにして、アルミホイルに包みます。七輪でじっくりと熱し、中ぐらいのさつまいもであれば、1時間ぐらいかけて甘味を引き出します。

【魚焼きグリル・オーブンで焼く】アルミホイルに包んでも良いですが、切ったさつまいもを耐熱皿にならべ、塩の衣を上に塗ってふたをして蒸し焼きにすると手軽です。180度で約1時間熱します。

塩がま蒸は、元祖石焼きいも?

さつまいもの塩がま蒸は、凝縮された旨味、ほどよい塩味とやわらかい食感が魅力でした。

ところで、1950年代にはじまった石焼きいも。その美味しさの秘密は、加熱温度と時間に。おいもの内部温度を65~75度の温度域に保ち、60分ぐらいかけてじっくり焼くことで、麦芽糖がぐんと増えます。「甘藷百珍物」が書かれた当時、このさつまいもの美味しさを引き出せた調理法は塩がま蒸だけだったのかもしれません。

そして、風味。江戸の焼きいもは、わらの灰の香りが強く、さつまいも本来の香りが薄れていたのでは。塩かま蒸だとダイレクトにさつまいもの香りが楽しめ、「風味至てよし」だったのかもと想像します。

おわりに

今回の発見はふたつ。

ひとつめは、鯛の塩がま焼きをするときに余った塩の上等な使い途の発見。捨てるのはしのびない塩の衣、さつまいもをくるんで鯛の脇で焼くのはとてもいい方法です。じゃがいもや里芋、他の根菜類も合いそう。

もうひとつは、石焼きいも・炭火焼きいもの魅力再発見。焼き加減が調節できて、芳ばしく焼けた皮も楽しめる、石焼きいもがやっぱりいいと落ち着きました。

 

sumimagic.hatenablog.com

 

sumimagic.hatenablog.com

<参考資料>日本いも類研究会「焼きいも研究チーム」(企画編集)焼きいもが、好き!2015, 農文協;原田 信男(校註・解説) 2009, 料理百珍集, 八坂書房