黒い食べものには、手が伸びない。
カリフォルニアロールが海苔を中に巻き込んでいるのも、海苔の黒さを隠すため。
食べつけていないと、そんなものかなと実感はありませんでした。けれど、はじめて黒いチーズをすすめられたとき、やはり躊躇。食べたいと思いませんでした。
最近、その黒さの正体が炭だと知り、俄然興味が!
フランスの伝統的な山羊チーズ、
シェーブル。
チーズに炭をまぶす理由とは?
シェーブルの美味しい食べ方は?
Selles-sur-cher
炭をまぶすようになった理由
その昔、農家の女性の人たちが台所で作っていたシェーブル。
ある日、チーズを乾かしていたところ、あやまってかまどの灰のなかにチーズが落っこちてしまいます。灰まみれになったチーズをそのままにしておいたところ、とても美味しくなったとか。それ以来、灰をまぶしたシェーブルが人気に。
薪文化のフランスでの炭まぶしが不思議でした。今は木炭粉を使うことの多いシェーブルですが、もともとは灰だったのですね。
炭をまぶす効果
一番の利点は、まろやかな味わいの実現!
酸味が強い山羊のミルク。それが、炭や灰をまぶすことで酸度が中和され、より口当たりのよいチーズに。
2つ目の利点。チーズは熟成期間中、どうしても表面がかたくなってしまいます。それが、表面に炭や灰をまぶすことによって、チーズから水分が蒸発していくのをふせぎ、表面がかたくなるのをおさえます。
さらに、炭や灰は、雑菌の繁殖からチーズをまもり、虫よけにも威力を発揮!
シェーブルの美味しい食べ方
独特の香りと味を上手に楽しむために、指南をあおいだのが「フロマジェが教えるおいしいチーズの新常識」、世界最優秀フロマジェのファビアン・デグレさんの本です。
チーズを知りつくしたスペシャリスト、フロマジェ。日本のチーズ店で働くフランス人のデグレさんが、チーズの魅力と美味しく食べるためのコツを、幅広く紹介してくれています。
今回のシェーブルは写真のSelles-sur-cher。ポプラの木炭の粉をまぶした、パリでも人気のチーズ。
完熟で、中はトロトロ。イチジクを煮詰めたコンフィチュール、黒コショウ、摘みたてのローズマリーをそれぞれ合わせてみました。
すべて美味しかったのですが、予想に反して一番気に入ったのがローズマリー。熟成が進みパンチがあるシェーブルの味と塩気が、ローズマリーのさわやかな香りを引き立てます。ローズマリーの新たな魅力を知りました。
デグレさんおすすめのワインは、ソーヴィニヨン・ブラン。おすすめ通り、フレッシュな酸とほのかな柑橘の香りが、シェーブルにぴったりでした。
おわりに
世界最古のチーズといわれる山羊のチーズ。
シェーブルの他に、淡泊な白カビチーズのブリーも用意していました。いつもは喜ぶブリーなのに、シェーブルの横では物足りなさを感じてしまう、個性のまぶしい炭チーズでした。
<参考資料>久田早苗, 2016, 魅惑のチーズバイブル フランス編, 主婦の友社;ファビアン・デグレ (著), 本間 るみ子 (監修), 2018, フロマジェが教える おいしいチーズの新常識 チーズの基本からプロのテクニックまで, 世界文化社