「ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも 行き詰まりを感じているなら、 不便をとり入れてみてはどうですか? 」という長いタイトルの本があります。著者は京都先端科学大学の川上浩司さん。
不便益研究の第一人者です。社会では便利、最短、効率の追求が良いことだとされています。けれど便利は豊かさなのでしょうか? 川上さんは、不便は手間だけれど役に立つ、不便にも益がある、といいます。
ピンチを切り抜けるにも、不便益は助けになりそうです。
川上さんの文章は「不便の価値を見つめ直す」という題で中学生の教科書にも掲載され、不便益に共通する効果が3点にまとめられています。
燃料としての炭も不便。
不便な炭をとり入れてみたところ、書いてあったとおりに不便益の効果を実感しました。
不便益の効果1 発見、出会いの機会が増える
スイッチひとつで制御可能。 簡単に消したり 強弱をつけたりすることができるガスと違って、 炭の火は生きています。七輪の中で荒々しく 燃え上がったり、ちょっと離れている間に消えてしまっていたり。 そんな炭火ですが、あかあかと静かに輝く姿を見ていると、同じように炭火を見ていた昔の人たちと時代を越えてつながってるような気がしてきます。何とも言えない不思議な安心感。
不便益の効果2 身体能力、知力、技術力の維持向上を促す
炭火で鍛えられる身体能力、あります。
炭に火をつける。できれば、一回ですんなりとつけたいと思うと、湿度と気温に敏感になります。気温が高くて、乾燥している日は、焚きつけの新聞紙が少なくても、気持ちよくあっという間に着火。けれど、湿度と気温次第ではハードルが高い。自分の皮膚で感じて、炭が起きやすい状態をつくってあげます。感度を高め、条件の悪い日でもすぐに起こせると、炭に褒めてもらった気分に。
そして、しっかり火が起きたかどうかを確認。七輪に置いてある煙突の上に手をかざし、暖かさ、熱の伝わり具合で判断します。見た目だけだと、起きが弱いといったことがわかりにくいのです。あまり意識していなかった身体感覚ですが、一度、意識し始めると他の場面でも応用がきいてとても便利です。
不便益の効果3 人間の意欲を向上させる
まるで馴染みのなかった炭でした。
火起こしは大変そうだし、基本男の人が担当といった思い込みもあって、距離を置いていました。ところが実際やってみると、予想外の感動と充実感! 他の食わず嫌いをしていたものも、試してみたら面白いし世界が広がりそうで挑戦してみたくなりました。
おわりに
不便だからこそ、味わえる喜びと充足感。
便利の外の世界には、違う景色が広がっています。これが行き詰まりの突破口になるのかも。今年の夏、不便益の効果を体感してみませんか!
<参考資料>川上浩司, 2017, ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも 行き詰まりを感じているなら、 不便をとり入れてみてはどうですか?インプレス, 中学校l国語1, 光村図書