炭の魔法

時計のない時間、心躍るおいしさ、自然の癒しをまねく炭。

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埋炭の効果2:発酵の場を整える!

「 職人のチーズでよく知られた地域とは言いがたい国、日本。

 けれど、この日が昇る国に燦然と輝くチーズがある。

 甘さ、酸味、塩味のバランスが絶妙なチーズ、サクラ。」

海外のチーズ専門誌が絶賛しているのは、共働学舎新得農場のナチュラルチーズです。

ナチュラルチーズは生きたチーズ。季節によって味が変わる原材料のミルクに、微生物や酵素がはたらき味や風味が変化する。チーズが生まれ育つ環境の影響を大きくうける繊細なチーズです。

一口タイプやスライスチーズなどのプロセスチーズが中心だった時代から、ナチュラルチーズづくりに取り組み、国内外で数々の賞を受賞している共働学舎新得農場。

農場には炭が埋められているのです。

世界が賞賛するチーズづくりを支える埋炭の効果とは?         

ブラウンスイス種

牛舎に埋炭:良質なミルク

質の高いチーズを作るために、欠かせない良質なミルク。

同じ種類の動物でも飼育環境や餌が違うとミルクの成分、風味が違ってきます。そこから生み出されるチーズは自ずとそれぞれ特有の個性と美味しさが。

農場では、牛が自由に動き回れる解放式牛舎、丁寧な清掃、床は発酵床、その下には埋炭。腐敗菌の活性が抑えられ、いわゆる牛舎臭がほとんどない清潔な環境が保たれています。牛たちの健康状態もよく、良質なミルクがしぼられています。

チーズづくりで一番大切なこと

農場の代表宮嶋望さんのチーズづくりの師匠は、フランスAOC(原産地呼称統制)チーズ協会元会長のジャン・ユーベルさん。

チーズづくりで一番重要なこととして、「牛乳を運ぶな」と説きました。

運ばないを実践するために、農場ではパイプで搾乳室からチーズ工房へミルクを流しています。搾乳室と工房の距離は23m。保健所は、牛舎につきものとみなされている悪臭、ハエ、汚水管理を避けるために50m離すことを求めてきたそうです。

農場では、徹底した衛生管理で悪臭、ハエ、汚水の問題を回避、食品衛生管理の厳格な基準HACCPもいち早くクリアしました。大きく役立ったのが「炭と微生物」。

方位磁石が常に北を示すように、地球は大きな磁石です。地球の磁力線の影響で、地表へ放出される電子。高温で焼かれた炭はマイナス帯電することが確認されていますが、炭を埋めることで電位があがり、微生物の働きに好ましい影響を与えます。

チーズ工房に埋炭

埋炭はチーズ工場にも。原材乳を加熱、攪拌、凝固、冷却させるチーズバットの真下に炭。床と腰の高さのコンクリートの壁には粉炭とセラミックスを混入。ケイ素が主成分のセラミックスはエネルギー変換率が高く、乳酸菌と分解菌を活性化。脂肪やタンパク質がきちんと分解され、脂肪酸アミノ酸になったときにチーズの味が形づくられます。

埋炭が「チーズの味に決定的な役割を果たしている」という宮嶋さん。

酒蔵でも埋炭が活躍

チーズだけではありません。

埋炭を活かして、極上の発酵食品をつくる職人さんは日本酒業界にも。

自然酒の草分けとして知られる寺田本家です。

蔵の敷地には20トンの炭を埋設。麹菌を育てる麹室は、床、壁、天井にも炭。壁の厚みを30㎝にして5トンの炭を使用。人工乳酸や協会酵母を使用せず、蔵付き微生物だけで行う生酛づくり。腐敗菌増殖のリスクがありながら、「一度も腐らせたことがないのは、炭の力によるところが大きい」と、寺田本家の寺田啓佐さんは語っています。

おわりに

共働学舎に寺田本家。

ナチュラルチーズに自然酒、共通して目指したのは「本物」でした。

どちらも職人技が光る、味わい深い芸術品です。

芸術品がうまれる発酵の場を整え、本物づくりを支える埋炭。埋炭は縄文時代から受け継がれてきた技術です。

シリーズ3回目は、埋炭の植物への効果です。

sumimagic.hatenablog.com

 

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<参考資料>佐藤優子, 2019, 日本のナチュラルチーズ, 虹有社;寺田啓佐, 2007, 発酵道, 河出書房新社;宮嶋望, 2017, 共鳴力:ダイバーシティが生み出す新得共働学舎の奇跡, 地沸社;Culture: the word on cheese, https://culturecheese.tumblr.com/post/65691963676/cheeses-of-the-world-sakura-cheese-japan-may-not