炭の魔法

時計のない時間、心躍るおいしさ、自然の癒しをまねく炭。

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里山林の再生:カギは国産の炭!

日本は森の国。国土の67%が森林です。

OECD加盟国のなかでは、フィンランドスウェーデンに次ぐ森林率の高さです(FAO, 2020)。けれど、木々におおわれた日本の山の元気がない。スギやヒノキを植えた人工林が、利用されずに荒れている話しはよく聞きます。残念なことに、人工林だけでなく、広葉樹の里山林も健やかとはいえない状況にあります。

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荒れていく里山

国内の森林の約3割を占める里山林。人々の暮らしを支えてきた木質エネルギー、薪や炭の供給源であった里山林の木は約20年の間隔できりだされ、下草もかられていました。林の中は明るく、オオクワガタ、オオムラサキ、春の女神とよばれるギフチョウヒメギフチョウなど昆虫の宝庫でした。春の山の明るくいきいきとした様子をあらわす季語「山笑う」。昔の里山林は笑っていたのでした。

しかし、電気・ガスの普及とともに薪や炭の需要が下がり、人の手が入らなくなりました。樹木は高齢化し、幹の太い木になってうす暗い森に。昆虫にとっても居心地が悪く、生物多様性が低下しています。伝染性のナラ枯れの拡大も、深刻な問題です。ナラ枯れは、ナラ類、カシ類、シイなどの木が感染すると急激に枯死する病気です。ナラ枯れの病原菌を媒介するカシノナガキクイムシ若木では繁殖できないため以前はみられない問題でした。

そして人間にも影響が。吸血性のマダニ類が媒介する感染症は、初めて報告された2013年以来、毎年死亡例がニュースになっています。里山林には、人が入らないことでシカ、イノシシが増え、下草が刈られなくなってササがはびこっています。マダニ類はシカ、イノシシなどに取りつきますが、待機場所にササを好みます。里山林がマダニ類の温床となっていることが、感染症の増加に関係しているのではと考えられています。

使っているのは輸入木炭

里山林は半自然林。人が木材を使うことによって保たれてきた山の健康です。木炭の需要がないかというと、そうではありませんでした。2019年、国内で使われている木炭の量は14.4万トン。しかし、国内生産分は2.1万トン。1950年、国内の木炭生産量は180万トンを超え、自給率は100%でしたが、2019年の自給率は14.5%にすぎません。現在、国内で使われている炭の大半は海外産で、中国、マレーシア、インドネシアが主な生産地です(林野庁, 2021)。インドネシアからきた友だちが日本の山々をみて、「日本にはてっきり木が生えていないと思ってたよ」と驚いていたのが印象的でした。

山笑う明日のために

里山林の健やかさにつながる国産黒炭は、緑の炭。積極的に使いたいところですが、ホームセンターでも目立つのは積み上げられた輸入木炭の箱で、国産の炭を見かける機会は少ないかもしれません。ネットでお取り寄せもいいですし、近くの燃料店さんに相談するのも一手です。ガス等を扱う燃料店さんには、もともと木炭を扱っていたお店が多いです。今も炭を販売しているお店がみつかれば、国産炭がぐっと身近になります。燃え方や香りなど品質の評価も高い緑の炭。選んで山を笑わせませんか。

 

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<参考資料>FAO, 2020. 「世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート林野庁仮訳;環境省, 2021「令和3年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書 」; 国立感染症研究所;岸本定吉, 1984.「木炭の博物誌」 総合科学出版;滝 久智・尾崎 研一(編), 2020「森林と昆虫」共立出版;永幡 嘉之, 2021「フォト・レポート 里山危機 東北からの報告 (岩波ブックレット) 」岩波書店林野庁, 2021「令和3年版 森林・林業白書